生活習慣に関するバイオマーカーを研究するヘルスケアシステムズの研究員による、国内海外のバイオマーカーや生活習慣に関わる学術論文をまとめました。

終末糖化産物

AGEs (Advanced Glycation End Products)

終末糖化産物(Advanced Glycation End products: AGEs)は、タンパク質や脂質、核酸などが、グルコースをはじめとする還元糖と非酵素的に反応(糖化反応)することによって生成される、多種多様な化合物の総称です。この反応は「メイラード反応」とも呼ばれ、初期の可逆的な段階を経て、最終的に不可逆的で複雑な構造を持つAGEsが形成されます。AGEsは、特にコラーゲンなどの代謝回転が遅いタンパク質に蓄積しやすく、加齢とともに体内に蓄積していきます。これらは、タンパク質同士を架橋させて組織を硬くしたり、細胞表面の受容体に結合して炎症や酸化ストレスを誘導したりすることで、細胞機能の障害や組織の変性を引き起こすことが知られています。

AGEsの測定は、その蓄積が老化プロセスや多くの慢性疾患の進展と深く関わっているため、幅広い疾患のリスク評価や病態把握に利用されます。特に糖尿病においては、持続する高血糖状態がAGEsの生成を著しく加速させ、血管、腎臓、神経、網膜などに蓄積して、糖尿病性合併症の主要な原因となります。また、AGEsはアルツハイマー病、骨粗しょう症、皮膚のシワや弾力低下(老化)とも関連が深いです。体内のAGEs蓄積レベルを測定することは、疾患リスクの指標となるだけでなく、食事指導や治療介入による効果を判定し、進行を監視するための重要なバイオマーカーとして用いられています。

論文タイトル:
The Role of Dietary Advanced Glycation End Products in Metabolic Dysfunction
筆頭著者と所属:
Domenico Sergi et al., Nutrition and Health Substantiation Group, Nutrition and Health Program, Health and Biosecurity, Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation (CSIRO), Adelaide, SA, 5000, Australia
雑誌名:
Molecular Nutrition & Food Research
概要:
本レビューでは、食事由来の終末糖化産物(AGEs)が代謝機能に与える影響を検討しています。AGEsは、糖とタンパク質の非酵素的反応によって生成され、食品の調理過程や加工中に形成されます。AGEsの摂取は、インスリン抵抗性、炎症、酸化ストレスの増加と関連しており、これらは2型糖尿病や心血管疾患などの代謝疾患のリスク因子とされています。さらに、AGEsはAGE受容体(RAGE)を介して細胞内シグナル伝達経路に影響を与え、代謝機能の調節に関与しています。これらの知見は、AGEsの摂取制限が代謝疾患の予防や管理に有益である可能性を示唆しています。
出典情報:
Sergi D, Boulestin H, Campbell FM, Williams LM. The role of dietary advanced glycation end products in metabolic dysfunction. Mol Nutr Food Res. 2021 Jan;65(1):e1900934. doi: 10.1002/mnfr.201900934. PubMed