生活習慣に関するバイオマーカーを研究するヘルスケアシステムズの研究員による、国内海外のバイオマーカーや生活習慣に関わる学術論文をまとめました。
終末糖化産物(Advanced Glycation End products: AGEs)は、タンパク質や脂質、核酸などが、グルコースをはじめとする還元糖と非酵素的に反応(糖化反応)することによって生成される、多種多様な化合物の総称です。この反応は「メイラード反応」とも呼ばれ、初期の可逆的な段階を経て、最終的に不可逆的で複雑な構造を持つAGEsが形成されます。AGEsは、特にコラーゲンなどの代謝回転が遅いタンパク質に蓄積しやすく、加齢とともに体内に蓄積していきます。これらは、タンパク質同士を架橋させて組織を硬くしたり、細胞表面の受容体に結合して炎症や酸化ストレスを誘導したりすることで、細胞機能の障害や組織の変性を引き起こすことが知られています。
AGEsの測定は、その蓄積が老化プロセスや多くの慢性疾患の進展と深く関わっているため、幅広い疾患のリスク評価や病態把握に利用されます。特に糖尿病においては、持続する高血糖状態がAGEsの生成を著しく加速させ、血管、腎臓、神経、網膜などに蓄積して、糖尿病性合併症の主要な原因となります。また、AGEsはアルツハイマー病、骨粗しょう症、皮膚のシワや弾力低下(老化)とも関連が深いです。体内のAGEs蓄積レベルを測定することは、疾患リスクの指標となるだけでなく、食事指導や治療介入による効果を判定し、進行を監視するための重要なバイオマーカーとして用いられています。