全国女性の年齢・地域別 食塩・カリウム摂取量・「ナトカリ比」の傾向を発表(第43回日本高血圧学会総会)

株式会社ヘルスケアシステムズ(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:瀧本陽介、以下当社)は、製鉄記念八幡病院と滋賀医科大学との共同研究により、全国の女性における尿検査で推定した食塩摂取量とカリウム摂取量、尿中Na/K比(以下「ナトカリ比」)の年齢別および地域別の傾向を確認したことをお知らせします。
今回の研究成果を、2021年10月15日〜10月17日に開催された「第43回日本高血圧学会総会」で発表しました(演題『全国の女性における随時尿を用いた推定食塩・カリウム摂取量の地域別比較』)。

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発表内容
①年齢別の傾向
年齢上昇に伴い、推定食塩摂取量が増加する傾向が見られたと共に、体内の余分な塩分(ナトリウム)を尿中に排出促進する働きを持つカリウムの推定摂取量も年齢上昇に伴い増加する傾向にありました。「ナトカリ比」は、年齢上昇に伴って減少する傾向にありました。
②地域別の傾向
推定食塩摂取量の平均値は東北地方が最も高く、中国地方が最も低いことがわかりました。一方で、カリウム摂取量は北海道で最も高く、中国地方で最も低いという結果でした。「ナトカリ比」が最も低かったのは北海道でした。
③考察とまとめ
本研究から、年齢や地域によって最適な減塩対策が異なることが示唆されました。それぞれ適切な施策を実施することで減塩やカリウム摂取の増加、「ナトカリ比」の低下が達成され、高血圧の予防に役立つことが期待されます。

 

研究背景

厚生労働省によると、健康な成人の日本人が目標にすべき1日の食塩摂取量は、男性で7.5グラム未満、女性で6.5グラム未満とされています※1。また、世界保健機構(WHO)は、世界の人々の食塩摂取量を2025年までに1日5グラム未満にすることを提唱するなど、世界中で高血圧の予防と克服のための減塩の取り組みが推奨されています。
しかし、日本における平均食塩摂取量は、年々減少傾向にあるものの、厚生労働省の目標量と比較すると未だに約2~3g多く摂取されているのが現状です。
そこで、新たな減塩の指標として、体内の余分な塩分(ナトリウム)を尿中に排出しやすくする働きを持つカリウムの摂取を勧める施策に注目が集まっています。カリウムを多く含む野菜を食べて”排塩”を促すことで、高血圧の予防に役立つと期待されています。また、総合指標としての尿中「ナトカリ比」が低いことが高血圧予防に役立つことも注目されています。
当社は、尿で食塩摂取量を測ることができる郵送検査サービスを展開しています。2017年~2019年にかけてサービスを利用した一般女性の中で、研究同意が得られた全国およそ1万人のデータを元に、現在の摂取されている推定食塩摂取量と推定カリウム摂取量、および「ナトカリ比」について調査しました。

※1 『日本人の食事摂取基準(2020年版)』策定検討会報告書

研究の内容と結果

本研究では、当社の郵送検査サービスを利用した一般の日本人女性(20~84歳)8,867名を対象に、郵送で尿検体を送ってもらい、尿中のナトリウムおよびカリウム濃度を測定し、各推定摂取量と「ナトカリ比」を算出しました。

年代別の傾向
年齢上昇に伴って、カリウムを多く摂れているのですが、それと共に食塩も多く摂っている傾向にありました。その一方、「ナトカリ比」は年齢の上昇とともに減少する傾向にありました。

地域別の傾向

年齢とともに各推定摂取量および「ナトカリ比」が変動する傾向が見られたため、地域別の傾向を検討にあたっては、地域ごとの年齢の偏りによる影響を考慮して年齢補正を行ったデータ※2で検証をしました。その結果、推定食塩摂取量平均値は東北地方が最も高く、中国地方が最も低いことがわかりました。一方で、推定カリウム摂取量平均値は北海道で最も高く、中国地方で最も低いことがわかりました。「ナトカリ比」平均値は四国で最も高く、北海道で最も低いという結果でしたが、地域間で有意な差は認められませんでした。

※2 各推定摂取量および「ナトカリ比」を従属変数に、年齢を共変量として共分散分析を実施し、ボンフェローニ法で補正。

考察とまとめ

全国の女性のすべての年齢層、地域において、厚生労働省が提唱する食塩とカリウムの摂取目標値は達成されていませんでした。
一方で、若い女性ほどカリウム摂取量が少なく、年齢が上がるにつれ食塩摂取量が増えている傾向にあることが明らかになりました。また、地域別では、食塩摂取量が多い地域ほどカリウム摂取量も多い傾向にあることがわかりました。
本研究から、年齢や地域によって最適な減塩対策が異なることが示唆され、それぞれ適切な施策を実施することで減塩やカリウム摂取増加、「ナトカリ比」の低下が達成され、高血圧の予防に役立つことが期待されます。

今後の展望

本研究は、食塩摂取量に加え、今後の減塩の指標として期待されているカリウム摂取量ならびに「ナトカリ比」において、全国的な調査で年齢ならびに地域で差があることを明らかにしました。年齢や地域により食習慣の違いがあり、気候や文化による違いが関係している可能性も考えられます。
課題としては、今回の研究の対象者は当社の郵送検査サービスを利用した女性に限定して行われており、今後は研究の対象を健診受診者や職域別など全国地域の各世代の一般住民に拡げ、検討する必要があります。
当社は、生活習慣や行動変容とバイオマーカー※2との相関性を解明し続けるとともに、生活者の毎日の健康に寄り添った検査サービスを展開することで、生活習慣のミスマッチをなくし健康な社会を実現できると考えています。本研究が、日本人の適切な食生活ならびに健康的な血圧の維持に貢献出来ると期待しています。

※2 バイオマーカー: 血液や尿などの体液や組織に含まれる物質を使って、未病や疾患の状態などを評価する指標

 

本件に関するお問合せ
株式会社ヘルスケアシステムズ 広報担当
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