機能性食品研究における変化点回帰モデルの新手法の有用性について発表しました

 

機能性食品研究における新たな効果解析法の可能性
変化点回帰モデルの新手法で抑制効果を検証
日本食品科学工学会 第71回大会にて発表

 

 生活習慣をテーマにした検査サービスを開発する株式会社ヘルスケアシステムズ(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長:瀧本陽介、以下当社)は、横浜薬科大学食化学研究室と新小山市民病院・予防医学センターと共同で、食品の機能性試験における変化点回帰モデル(Change-Point Regression Model【CPRM】)を使った効果解析を実施。その有用性について、日本食品科学工学会 第71回大会(8月29日~31日開催)にて発表しました。
 CPRMは、介入の効果が出現する変化点を統計モデルに組み込むことで、より精度の高い効果評価を可能にします。今回新たに発表された統計解析手法では、経時的悪化を抑制する抑制効果を検出できる可能性を示しました。
 当社は、このような解析手法を取り入れることによって、どのような人にどのような効果があるのかを明らかにし、食品等の臨床研究の発展に貢献してまいりたいと思います。

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■研究の背景

 機能性食品のヒト介入の臨床試験では、研究対象者は健康な人や疾病との境界域の人を含む幅広い層が対象になります。このような場合、健康な人における介入効果が境界域の人における介入効果よりも小さくなる傾向がありますが、従来の統計解析手法(t検体や共分散分析(ANCOVA)等)では、介入効果の大きさは一定であるという前提に基づいたものでした。
 この様な介入効果の不均一性に対して、介入群の改善効果が出現する変化点をモデルに組み込み解析する【CPRM】が有効と、横浜薬科大学食化学研究室の速水耕介教授らによって提案されてきました。

 今回の共同研究では、2020年にヘルスケアシステムズが受託して実施されたハトムギ茶摂取による角層水分量の研究データを用いて、CPRMを使った抑制効果の解析について検証しました。なお、本モデルの構築は、共同研究者でCPRMの第一人者でもある横浜薬科大学食化学研究室の速水耕介教授のもとで行われました。

 

■研究内容

 解析に使用されたデータは、2020年7月から10月にかけて実施されたハトムギの有効性を評価する介入研究の結果です。この研究では、69名の健康な女性を対象に二重盲検プラセボ対照無作為化試験が実施されました。参加者は、ハトムギ茶群(n=34)とプラセボ(麦茶)群(n=35)に無作為に割り付けられ、それぞれ8週間毎日摂取し、介入前後の皮膚の保湿機能を評価する角層水分量(SCW)を測定しました。
 この研究対象者の角層水分量の減少について,介入前の値が介入後の値に効果を及ぼしているかを、CPRMのモデル式を用いて検証を行いました。

 

■■研究結果

 CPRMの結果,角層水分量の介入前の値が24.8 (a.u.)に変化点があり、プラセボ群では変化点以上の値の場合、角層水分量の減少が大きくなることがわかりました。一方、ハトムギ茶群では変化点以上でも角質水分量が大きく減少することはありませんでした。
 このことにより、ハトムギ茶摂取による角質水分減少の抑制効果が認められました。先行研究でもハトムギの角層水分量の減少に対する抑制効果は角層水分量の介入前の値が中央値(25.2(a.u.))以上の方を対象としたサブグループ解析で有意な差が見られましたが、CPRMを用いることによって、抑制効果を示す変化点をより厳密に捉えられたと考えられます。

 

■今後の課題と展望

 解析の結果、CPRMを用いて食品の機能性の抑制効果を明らかにしました。また、このたびの検証から、本モデルが機能性食品のヒト介入の臨床試験において、より高精度に抑制効果を検出できる可能性を示すことができました。
 CPRMは、介入前の値以外に年齢などにも適用が可能であり,様々な機能性食品の介入研究の解析にも有用であることが期待されています。

 

【共同研究メンバー】

・横浜薬科大学食化学研究室 速水耕介先生
https://www.hamayaku.ac.jp/about/teachers/post_10.html
・新小山市民病院予防医学センター 篠原裕枝先生、中野真宏先生
https://tochigi.hospital-shinoyama.jp/
・株式会社ヘルスケアシステムズ
 

本件に関するお問合せ
株式会社ヘルスケアシステムズ 広報担当 高実子(たかじつこ)
MAIL : pr@hc-sys.jp
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