蒲郡市協力「乳幼児の肌バリア検査実証実験」の成果を報告しました
蒲郡市民病院・蒲郡市協力
【成果報告】乳児健診での肌バリア検査紹介を起点に乳幼児期からの肌ケアの重要性を啓発
保護者の肌ケア意識・行動の変化及び乳児の肌状態への影響を検証
未病をテーマにした郵送検査サービスを展開する株式会社ヘルスケアシステムズ(代表取締役社長:瀧本陽介、以下当社)は、2023年4月から、蒲郡市(市長:鈴木寿明)と花王株式会社(社長:長谷部佳宏、以下花王)の協力のもと「肌バリア検査による保護者の肌ケア意識・行動の変化及び乳幼児の肌状態への影響を検討する実証実験」を行いました。
乳児期の肌ケアは保護者個人の考えで行われているものですが、今回は、産官医が連携して通常の乳児健診に本実証検証を組み込む形での実施となりました。その結果をご報告します。
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<実証実験 全体像>
この実証実験は、蒲郡市の協力のもと、蒲郡市民病院での1カ月児健診来院者から参加者を募集しました。参加者には肌バリア検査を無償で提供し、当日の健診時に小児科医から肌状態やアレルギーに関する問診が行われました。その後、参加者は自宅で乳児の肌バリア検査を実施し、後日肌バリア状態の結果と肌ケアアドバイスを受け取りました。
<解析結果 概略>
1カ月児健診時に肌バリア検査を実施し、乳幼児の皮膚状態を把握することができた保護者は、肌ケアの意識が高く、早期から乳幼児の肌に合ったケアを習慣化できていたことがわかりました。また、1カ月児健診時に肌バリア検査を実施した乳児群と 肌バリア検査を実施しなかった乳児群 の、7カ月時点での肌状態を比較した結果、1カ月児健診時に肌バリア検査を実施した乳児群の方が、肌バリア状態が良好でした。保護者の意識・行動が変容することにより、肌バリア機能の改善、アトピー性皮膚炎の発症抑制につながる可能性が示唆されたと考えます。
背景
肌の最外層にある角層には外部刺激から肌を守るバリア機能があります。この肌バリア機能が低いとアトピー性皮膚炎の発症リスクが高いことが分かっており、乳幼児期に発症するアトピー性皮膚炎は、食物アレルギーや気管支ぜんそくなどを引き起こす「アレルギーマーチ」の入口となることも指摘されています。そのため、肌のバリア機能低下の兆しを早くに見つけ、保湿などのケアによって、「肌バリア」を良い状態に保つことが有用であると考えられます。
2023年3月、当社は、花王の開発した皮脂RNAモニタリング技術を活用し、見た目ではわからない乳幼児の肌バリア機能の状態を把握し、肌に合わせたアドバイスを提供する郵送検査サービスをスタートさせました。
子育て支援や医療の充実に取り組む蒲郡市は、保護者が乳幼児の皮膚状態を把握し、早期から肌ケアへの意識を高め、肌に合ったケアを習慣とすることが、子どもの健やかな成長にとって重要と考えました。
そこで、当社は蒲郡市とともに、花王の協力のもと生後1カ月時点の乳児に『肌バリア検査』を活用した場合の保護者の意識・行動を半年間調査するとともに、生後7カ月時点の肌の状態を生後1カ月時点での『肌バリア検査』未実施の乳児と比較する実証実験を実施しました。
- 実証実験名:肌バリア検査による保護者の肌ケア意識・行動の変化及び乳幼児の肌状態への影響を検討する実証実験
- 実証実験期間:2023年4月~2024年6月
- 実証実験機関:蒲郡市、株式会社ヘルスケアシステムズ(協力(分析提供):花王株式会社)
- 対象者:
【介入群】1カ月児健診時に肌バリア検査を実施する乳児
*2023年3月以降に生まれ、指定の機関で1カ月、4カ月、7カ月すべての健診を受ける
【非介入群】1カ月児健診時に肌バリア検査を実施していない乳児
*2022年9月以降に生まれ、指定の機関で7カ月児健診を受ける - 実証実験実施場所:1カ月児健診、7カ月児健診は蒲郡市民病院
4カ月児健診は蒲郡市保健医療センター - 実証実験の概要:
(1)介入群に対して、1カ月児健診時に医師の診察、肌バリア検査を実施
(2)介入群の保護者に、乳児の肌バリア状態の結果及び肌ケアのアドバイスを提供し、半年間の肌ケア実践状況を調査
(3)介入群の保護者に、蒲郡市での4カ月児健診時に肌ケア動画の視聴及び肌ケアのチラシを配付
(4)介入群・非介入群に対して、7カ月児健診時に、医師の診察及び肌バリア検査を実施
(5)介入群・非介入群の生後7カ月時点での肌状態を比較し、肌ケアの習慣を推奨することの有用性を検証
<実証実験の流れ>
検証結果報告
1カ月児健診後に肌バリア検査を実施し、乳幼児の皮膚状態を把握することができた保護者は肌ケアの意識が高く、早期から乳幼児の肌に合ったケアを習慣化できていたことが分かりました。保護者の意識・行動が変容することにより、肌バリア機能の改善、アトピー性皮膚炎の発症抑制につながる可能性が示唆されたと考えます。
1.介入群の保護者の肌ケア意識・行動
介入群に対して、1カ月児健診~7カ月児健診までの間、普段の肌ケア習慣に関するアンケートを2週間に1回の頻度で実施することで、肌ケアの習慣ができているかどうかを確認しました。
その結果、肌ケア習慣については97%の保護者が期間中平均して「とてもよくできた」「まあできた」と回答し、肌ケア頻度については80%が期間中平均して「毎日欠かさずできた」「週5~6回程度」と回答しました。
この結果から、介入群において、介入期間中のお子様への肌ケア意識・行動は良好であったと考えられます。
【図】肌ケアの習慣・頻度に関するアンケート結果
(左)肌ケア習慣、(右)肌ケア頻度
※n=64(介入群のみ)
※設問:Q1=この2週間のお子様の肌ケア習慣はいかがでしょうか。[1. 全くできなかった 2. あまりできなかった 3. まあできた 4. とてもよくできた], Q2=この2週間の肌ケア頻度はいかがでしょうか。[1. 週に1回未満 / 全くできなかった 2. 週に1〜2回程度できた 3. 週に3〜4回程度できた 4. 週に5〜6回程度できた 5.毎日欠かさずできた]
※1カ月児健診~7カ月児健診までの2週間ごとのアンケート結果の平均値を集計し、下記の通り期間中の平均評価とした。
Q1:1.5未満=「全くできなかった」、1.5以上2.5未満=「あまりできなかった」、2.5以上3.5未満=「まあできた」、3.5以上=「とてもよくできた」
Q2:1.5未満=「週に1回未満 / 全くできなかった」、1.5以上2.5未満=「週に1~2回程度できた」、2.5以上3.5未満=「週に3~4回程度できた」、3.5以上4.5未満=「週に5~6回程度できた」、4.5以上=「毎日欠かさずできた」
2.肌バリア検査結果
介入群の介入前(生後1カ月)、介入後(生後7カ月)、非介入群(生後7カ月)の肌バリア検査結果を比較しました。
(1)A~Cの肌バリア総合評価において、介入群では、介入後にA評価の割合が増加し(25%→28%)、C評価の割合が減少しました(25%→21%)。また、生後7カ月時点において、介入群は非介入群よりもA評価(介入群:28%、非介入群:22%)およびB評価(介入群:51%、非介入群:37%)の割合が高く、C評価((介入群:21%、非介入群:41%)の割合が低いことが分かりました。
(2)介入の前後で、肌バリア3因子のうちの「乾燥を防ぐ力」指標が有意に改善しました。また、生後7カ月時点において、非介入群に比べて介入群で「乾燥を防ぐ力」が有意に高いことがわかりました。
【図】肌バリア検査の結果例
(左)肌バリア検査総合評価判定、(右)肌バリア3因子の結果
【図】生後7カ月時点における肌バリア検査結果の比較
(左)肌バリア検査総合評価の結果、(右)「乾燥を防ぐ力」指標の結果
※n=106(介入群:66、非介入群:40)
※総合判定は「乾燥を防ぐ力」「うるおいを保つ力」「丈夫な角層を作る力」の各評価を総合してA,B,Cの三段階で評価
※「乾燥を防ぐ力」は星1~5の平均値±SEを算出し、ウィルコクソンの符号付き順位検定を行った。
3.UKWPに基づくアトピー性皮膚炎の発症率
生後7カ月時点におけるアトピー性皮膚炎(※)の発症率を調査したところ、介入群が9%、非介入群が17%と、介入群の方がアトピー性皮膚炎発症 率が8ポイント低いことがわかりました。
【図】生後7カ月時点におけるアトピー性皮膚炎(AD)発症率の比較
※n=109(介入群:68、非介入群:41)
※ADはUKWPに基づく小児科医、皮膚科医による診察により判定
蒲郡市 コメント
蒲郡市では、市民の皆さまが安心して出産・子育てをできるよう、様々なニーズに即した支援・サービスを行っております。この度の実証検証では、お子さんの肌ケアによい結果が示されたということで、大変有意義であったと感謝しております。実証検証において、市の4カ月児健診で、保湿やアレルギーマーチに関する動画を見ていただく機会がありましたが、多くの保護者の方々が真剣に動画を見られており、肌ケアへの関心が高いことがわかったことに加えて、肌ケアについての情報提供できるよい機会となりました。保護者の方からも、肌ケアに関するご質問を受けることもあり、コミュニケーション向上にもつながりました。今後は、今回の取り組みが、お子さんの肌ケアに関する新たな施策につなげていけるよう検討していきたいとも思います。
蒲郡市民病院 小児科医 コメント
小児科医として、アレルギーマーチの早期からの予防の重要性は認識しておりました。この実証実験を通じて、保護者の方々に早くからお子様の肌状態への関心を高めていただけるような機会をもつことができ、それが結果的にお子さまの肌バリアの向上に繋げられたことは大変意義深いことだと考えます。
株式会社ヘルスケアシステムズ 代表取締役社長 瀧本 陽介 コメント
生後1カ月から半年の間は、子育ての中でも保護者にとって非常に大変な時期だと思います。この時期に、将来のアレルギーマーチを予防するための肌ケアの重要性を啓発することは、あまり注目されにくい現状がありました。今回、蒲郡市様のご協力をいただき、複数の乳児健診を通じてその重要性を啓発できたことは、非常に意義深いことだと考えています。この成果を「蒲郡モデル」として、子育て支援に取り組む他の自治体にも広めていきたいと考えています。
肌バリア検査『ベビウェルチェック』について
ヘルスケアシステムズが花王と共同開発した、自宅にいながらにして、皮脂RNA情報から乳幼児の肌内部の状態(肌バリア機能)を知ることができ、肌状態に合った肌ケア情報が受け取れる郵送検査サービス。2023年3月発売。
▼ 製品サイト「カラダのものさし」https://karadano-monosashi.jp/