コプリーノ®(ササクレヒトヨタケ)

コプリーノ®(ササクレヒトヨタケ)の研究報告

近年「エルゴチオネイン」という含硫アミノ酸の一種を豊富に含むとして注目されているコプリーノ®。弊社では、エルゴチオネインによる肌の老化予防や生活習慣病の予防効果について研究を進めています。

※コプリーノ®はヘルスケアシステムズの登録商標です。

 


コプリーノ®とは

コプリーノ®は、ヨーロッパや北米など世界中の温帯地域に広く分布し、日本でも春から秋にかけて自生するハラタケ科の食用キノコです。

有機質の多い堆肥や腐葉土に発生し、絹のような白い傘のかわいらしい形をしています。

和名をササクレヒトヨタケといいますが、これは傘の部分の鱗片がささくれたように見えることと、たった一晩でキノコになるほど成長が早いことからヒトヨタケという名前が付けられたようです。そのため、自然ではその美しさは数日しか保たれず、『幻のキノコ』とも呼ばれています。

名古屋大学・北海道教育大学の研究により、コプリーノ®はエルゴチオネインというアミノ酸を非常に多く含むことが分かってきました 【1】。

そして、コプリーノ®の機能性についても徐々に明らかとなってきました。

コプリーノ®に含まれる「エルゴチオネイン」

エルゴチオネインは、強い抗酸化力をもつ水溶性の希少アミノ酸です。

しかし、エルゴチオネインはヒトの体内で生合成することができないため、もっぱら食事から取り入れることしかできません。近年の研究により、食事から取り込まれたエルゴチオネインは、肝臓や腎臓、皮膚、脳など様々な組織で起きる酸化障害(からだのサビつき)を抑えるはたらきをしていることが分かってきました。

米ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、エルゴチオネインの体内における抗酸化作用と細胞保護作用に注目し、新しいビタミンの可能性があると示唆しています 【2】。

 

食品でエルゴチオネインを生合成できるのはキノコ類に限られます。

主な食用キノコ10種類のエルゴチオネイン量を分析したところ、コプリーノ®は、シイタケの23倍、タモギタケの約1.5倍のエルゴチオネインを含有していることがわかりました【1】。

麻布大学の研究でも同様に、エリンギやタモギタケと比べて約3~10倍以上の極めて高いエルゴチオネイン量が確認されています 【3】。

エルゴチオネインはキノコ類と一部の細菌しか合成できないことから、コプリーノ®は世界で最も多くエルゴチオネインを含む食品ではないかと考えられています。

私たちは、株式会社岩出菌学研究所との共同研究により、白く愛らしい姿をもち、エルゴチオネインが豊富な国産菌株(iwade-51株)を選抜し、人工栽培と機能性に関する研究を重ねてきました。健康食品や化粧品の原料素材として、効率的にエルゴチオネインを抽出する技術を開発し、「コプリーノパウダー」、「コプリーノエキス」として商品化しています。

食材としてのコプリーノ®

イタリアでは高級食材

日本ではあまりなじみのないキノコですが、イタリアなど欧米諸国では、その味と希少価値から高級食材として珍重されており、パスタやフリッタータ(イタリア風オムレツ)、サラダなど様々な料理で食べられています。

数日で消えてしまうという希少性から流通量は多くありませんでしたが、私たちは効率的な栽培技術の開発に成功し、パラグアイの日系人農家の方々と協力して無農薬栽培を行っています。

マツタケやポルチーニのような独特の香りはありませんが、しっかりとしたうま味を持つおいしい食材です。

豊富なうま味アミノ酸

 

コプリーノ®は、機能性だけでなくおいしさも際立っています。

「抽出するととてもおいしそうな香りがする」という研究員の報告から、うま味アミノ酸を分析したところ、キノコ類に多いグアニル酸だけでなく、グルタミン酸も昆布のように豊富に含まれていることがわかりました。

うま味アミノ酸は、複数の成分が同時に入っていると相乗的に旨みが増すことが知られています。 多くの健康食品成分は、苦みや渋みが強く、タブレットやカプセルにしないと食べにくいものが多いのですが、コプリーノはおいしい健康食品としての可能性を秘めています。

今後、サプリメントとしての利用のほかに、おいしい健康食材として機能性スープや機能性おやつなどへの活用が期待されています。

 

エルゴチオネインについて

エルゴチオネインの機能性

 

エルゴチオネイン(L-Ergothioneine)は、1909年に麦角から発見され1911年に化学構造が決定されたアミノ酸の一種です。

分子量が229.3と小さく水溶性で、熱や酸にも強いという特徴をもっています。コプリーノに含まれるエルゴチオネインも、120℃に2時間おいても、pH3~9の酸性・アルカリ性環境下でもほとんど影響を受けません。

エルゴチオネインは多くの生物に存在しますが、動物や植物は生合成できず、キノコなどの菌類と一部の細菌(マイコバクテリア)だけが作ることができます 【4,5】。

植物は土壌細菌がつくったエルゴチオネインを根から吸収し、動物は植物を食べることでエルゴチオネインを身体の中に取り入れて貯蔵しています。

ヒトも食べ物からエルゴチオネインを取り入れて、肝臓や腎臓、赤血球、皮膚などに蓄えています。

エルゴチオネインの抗酸化・抗炎症作用

エルゴチオネインは抗酸化・抗炎症能に優れた物質であることは広く知られており、DNAの酸化損傷や脂質過酸化を抑制する効果が確かめられています。

img_coprino04グルタチオンや尿酸、ビタミンEなど、よく知られている他の抗酸化物質との比較をしたところ、これらと比べてエルゴチオネインの活性酸素や活性窒素に対して非常に高い消去能を持つことが分かってきました 【6】。

名古屋大学、北海道教育大学との共同研究でも、エルゴチオネインの抗炎症作用を検証しました。左の図は、細胞にTNF-αという炎症を引き起こす物質を添加し、人工的な炎症モデルに対するエルゴチオネインの効果を確かめた実験結果です。

IL-6という炎症マーカーは、TNF-αを添加すると、高い数値を示します。 しかし、エルゴチオネインを合わせて添加することで、炎症を抑える効果が示されました【7】。また、エルゴチオネイン量を同一にしたコプリーノ抽出物を添加すると、さらに炎症を抑えることがわかりました。 これは、コプリーノに含まれるポリフェノールや多糖類などとの相乗効果によるものと考えられています。

体内への吸収と作用

エルゴチオネインの生体内での作用は、近年活発な研究が進められ、徐々に明らかになってきています。腸から吸収されたエルゴチオネインは血管を通じて各組織へ運ばれ、OCTN-1というエルゴチオネインに特異的なトランスポーター(輸送体)と結合して細胞内へと取り込まれます 【8】。

金沢大学・加藤教授らの研究によると、摂取されたエルゴチオネインは4時間後には小腸で最も多く、肝臓や腎臓でも存在が確認されました。摂取14日後には肝臓や腎臓のほか、骨髄、心臓、肺、さらには皮膚や脳まで届くことがわかりました。

またOCTN-1を発現できなくした遺伝子組み換えマウスでは、ほとんどの臓器にエルゴチオネインを運ぶことができませんでした 【9】。

細胞内では、紫外線・放射線や酸化などのストレスによるアポトーシス(細胞死)を誘導する「p38-MAPキナーゼ」の活性化を抑えることで細胞を保護していることが明らかとなり、新しいビタミンの可能性があるとも言われています【10,11】。

肌の老化を抑える作用

地表まで届く紫外線は、波長の長さからUV-A(A波)とUV-B(B波)に分けることができます。 UV-Bは皮膚ガンなどの原因になることが知られていましたが、近年の研究によりシミやシワなど肌の老化にはUV-Aの方が主要な原因ということがわかってきました。

UV-Aは、紫外線の97%を占め、雲やガラスも透過するため、日常の生活で防ぐことは簡単ではありません。UV-Bと比べるとエネルギーは弱く、肌に対して急激な変化は与えませんが、肌の深く真皮レベルにまで到達し、長い時間をかけて弱い炎症を引き起こします。この長年にわたる炎症により、コラーゲンやエラスチンがダメージを受け、光老化とよばれる肌の老化につながると考えられています。 肌の深い部分で影響を与えるため、体の内側から改善することが必要と考えられます。

化粧品や外用剤でも炎症を抑える成分はありますが、真皮レベルまで到達するものはほとんどありません。 エルゴチオネインは、食べて肌まで届く抗酸化・抗炎症成分として光老化を抑える作用が期待されています。 そこで、紫外線照射によるコラーゲン分解を抑える効果の実験を行いました。

MMP-1(マトリックスメタロプロテアーゼⅠ)という、Ⅰ型コラーゲンを分解する酵素を作る遺伝子の発現量について、紫外線照射による影響を実験したところ、コプリーノエキスを添加すると、MMP-1の発現量は半分以下になりました。この結果は、コプリーノRが紫外線によってコラーゲンが分解されることを抑える可能性を示唆しています。

私たちは、光老化抑制効果が実際に食べても同じようにはたらくかどうか、動物に食べさせた時の研究をしています。 この実験結果は2011年に台湾で開催された国際フードファクター学会にて発表しました。

【1】 伊藤,大澤ら:第56回日本食品科学工学会(2009)
【2】 Paul BD & Snyder SH:Cell Death and Differentiation, 17(7), p1134-40(2009)
【3】 慶林坊,堂ケ崎:麻布大学雑誌, 15-16, p65-66(2007)
【4】 Genghof DS.:J. Bacteriol., 103, 475-478(1970)
【5】 Ey et. al.:J. Agric. Food Chem., 55, 6466-6474(2007)
【6】 Franzoni F. et. al.:Biomed. Pharmacother., 60, 453-457(2009)
【7】 Ito T. et. al.:Food Sci. Tech. Res., 17, 103-110(2011)
【8】 Grudemann D. et. al.:Proc. Natl. Acad. Sci., 102, 5256-5261(2005)
【9】 Kato Y. et. al.:Pharmaceutical Res., 27, 832-840(2010)
【10】 Paul BD & Snyder SH:Cell Death and Differentiation, 17(7), p1134-40(2009)
【11】 Colognato R. et. al.:Clin. Nutri., 25(1), 135-145(2006)

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