生活習慣に関するバイオマーカーを研究するヘルスケアシステムズの研究員による、国内海外のバイオマーカーや生活習慣に関わる学術論文をまとめました。

エクオール

Equol
エクオール(Equol)は、大豆イソフラボンの一種であるダイゼイン(Daidzein)が腸内細菌による代謝を経て生成される代謝産物です。エクオールはエストロゲン受容体に結合し、エストロゲン様作用を示すことから、女性の健康維持やホルモンバランス調整に関連する研究の対象として注目されています。さらに、エクオールの測定は、個人の腸内環境によるエクオール産生能の評価に加え、更年期症状、骨粗鬆症、乳がん、前立腺がんなどの疾患リスクとの関連解析や、大豆由来食品やサプリメントの効果検証においても重要な指標となっています。
論文タイトル:
Equol: A Bacterial Metabolite from The Daidzein Isoflavone and Its Presumed Beneficial Health Effects
筆頭著者と所属:
Baltasar Mayo et al., Instituto de Productos Lácteos de Asturias, Consejo Superior de Investigaciones Científicas (IPLA-CSIC), Villaviciosa, Spain
雑誌名:
Nutrients
概要:
この論文は、大豆イソフラボンであるダイゼインの細菌代謝物であるエクオールについて、その生物学的特性および健康への潜在的な有益効果を包括的にレビューしたものです。エクオールは、特定の腸内細菌によるダイゼインの代謝産物であり、エストロゲン様作用を有することで知られています。本レビューでは、特にエクオールの抗酸化作用、抗炎症作用、心血管系および骨代謝への影響、さらには乳がんや前立腺がんのリスク低減効果に焦点を当てています。
エクオールは、エストロゲン受容体β(ERβ)に対する選択的活性を示し、エストロゲン依存性疾患における潜在的な治療効果が期待されています。また、エクオール生産者(腸内細菌がエクオールを生成できる人)と非生産者の間で健康効果が異なることも報告されており、この違いが疾病リスクや治療効果にどのように影響するかについても議論されています。
さらに、エクオールは骨粗鬆症や閉経後症候群の予防、さらには腸内環境の改善にも関与している可能性があるとされています。本論文では、これらの効果を裏付ける研究結果を総合的に整理するとともに、エクオールの健康効果を理解する上での課題や今後の研究方向性についても触れています。
出典情報:
Baltasar Mayo, Lucía Vázquez, Ana Belén Flórez, Equol: A Bacterial Metabolite from The Daidzein Isoflavone and Its Presumed Beneficial Health Effects, Nutrients, 11(9), 2231, https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31527435/.
PubMed

論文タイトル:
Possible role of equol status in the effects of isoflavone on bone and fat mass in postmenopausal Japanese women: a double-blind, randomized, controlled trial
筆頭著者と所属:
Jian Wu et al., Nutritional Epidemiology Program, National Institute of Health and Nutrition, Tokyo, Japan
雑誌名:
Menopause
概要:
この研究では、早期閉経後の日本人女性を対象に、エクオール産生能がイソフラボンの骨密度および脂肪量への影響に関与するかを検討するため、1年間の二重盲検ランダム化試験が実施されました。被験者はエクオール産生者と非産生者に分類され、75 mg/日のイソフラボンまたはプラセボが投与されました。1年後、イソフラボン群のエクオール産生者では血清エクオール濃度が有意に上昇しましたが、非産生者では変化が見られませんでした。
エクオール産生者のイソフラボン群では、全股関節および大転子部の骨密度の年間変化率がそれぞれ-0.46%および-0.04%であったのに対し、非産生者では-2.28%および-2.61%と有意に低下しており、両群間で有意差が認められました(P<0.05)。また、脂肪量の年間変化率についても、イソフラボン群のエクオール産生者と非産生者の間で有意差が観察されました。一方、プラセボ群では、エクオール産生者と非産生者の間で骨密度および脂肪量の年間変化率に有意差は認められませんでした。これらの結果は、イソフラボンの骨量減少および脂肪蓄積抑制効果が、個人のエクオール産生能に依存する可能性を示唆しています。
出典情報:
Jian Wu, Jun Oka, Junko Ezaki, Takuya Ohtomo, Tomomi Ueno, Shigeto Uchiyama, Toshiya Toda, Mariko Uehara, Yoshiko Ishimi, Possible role of equol status in the effects of isoflavone on bone and fat mass in postmenopausal Japanese women: a double-blind, randomized, controlled trial, Menopause, 14(5), 866-874, https://doi.org/10.1097/gme.0b013e3180305299.
PubMed

CASE STUDY 事例紹介