生活習慣に関するバイオマーカーを研究するヘルスケアシステムズの研究員による、国内海外のバイオマーカーや生活習慣に関わる学術論文をまとめました。

IgA(総IgA及び分泌型)

IgA_sIgAG
IgA(免疫グロブリンA)は、体内で最も豊富に存在する抗体の一つで、主に粘膜免疫において重要な役割を果たします。IgAは血清中に存在する総IgAと、粘膜表面で分泌される分泌型IgA(Secretory IgA, sIgA)に分類されます。総IgAは全身性の免疫応答に関与し、sIgAは唾液、涙、鼻汁、腸管液などの粘液分泌物に多く含まれ、外部から侵入する病原体や異物の排除に寄与します。
IgAの測定は、免疫機能の評価や疾患リスクの診断において重要です。具体的には、低IgA血症やIgA欠損症のスクリーニング、自己免疫疾患やアレルギー疾患の評価、腸内環境や粘膜免疫の状態を調べるために用いられます。また、sIgAはストレスや感染症への応答として変動するため、健康状態や心理的ストレスの指標としても注目されています。
論文タイトル:
Increased IgA levels in saliva during pregnancy
筆頭著者と所属:
L Widerström et al., University of Gothenburg
雑誌名:
Journal of Oral Pathology & Medicine
概要:
本研究では、妊娠中の唾液中免疫グロブリンA(IgA)濃度の変化を調査した。妊娠中の女性の唾液サンプルを非妊娠女性と比較したところ、妊娠中には唾液中のIgA濃度が有意に上昇することが確認された。この増加は、妊娠中の免疫応答における局所的な防御メカニズムの変化を反映している可能性がある。また、IgAレベルの上昇が、妊娠中の口腔内感染リスクの変動に影響を与えることが示唆された。これらの知見は、妊娠における免疫学的変化を理解するための重要な手がかりを提供するものである。
出典情報:
Widerström Lら, Increased IgA levels in saliva during pregnancy, J Oral Pathol Med, 92(1), 33-37, DOI: 10.1111/j.1600-0722.1984.tb00856.x. PubMed

論文タイトル:
Secretory IgA in saliva and academic stress
筆頭著者と所属:
T Otsuki et al., University of Tokyo
雑誌名:
Minerva Stomatologica
概要:
本研究は、学業のストレスが唾液中の分泌型免疫グロブリンA(sIgA)に与える影響を調査した。学生を対象に、試験前と試験後で唾液中のsIgAレベルを測定した結果、学業のストレスがsIgAの分泌に顕著な変化を引き起こすことが確認された。具体的には、試験前においてsIgAのレベルが低下し、試験後に回復する傾向が見られた。このことは、ストレスが免疫応答に直接的な影響を与えることを示唆しており、sIgAがストレス管理や健康状態の指標として有用である可能性を示すものとなった。
出典情報:
Otsuki Tら, Secretory IgA in saliva and academic stress, Minerva Stomatol, 17(2 Suppl), 45-48, DOI: 10.1177/03946320040170S208. PubMed

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