生活習慣に関するバイオマーカーを研究するヘルスケアシステムズの研究員による、国内海外のバイオマーカーや生活習慣に関わる学術論文をまとめました。

コルチゾール

Cortisol

コルチゾール(Cortisol)は、副腎皮質から分泌される糖質コルチコイドホルモンで、ストレス応答やエネルギー代謝、免疫調節において重要な役割を果たします。コルチゾールの分泌は視床下部‐下垂体‐副腎(HPA)軸によって制御され、日内変動することが特徴であり、一般的に朝に高く、夜に低い値を示します。

コルチゾールの測定は、ストレス状態の評価、HPA軸機能の診断、ならびに関連疾患の管理において重要です。具体的には、慢性ストレス、うつ病、慢性疲労症候群などの精神疾患の評価、クッシング症候群やアジソン病などの内分泌疾患の診断に利用されます。また、唾液、血清、尿中のコルチゾール濃度測定が行われ、特に唾液中のコルチゾールは非侵襲的で日内変動の測定に適しています。コルチゾールは、ストレスや健康状態のバイオマーカーとして幅広い分野で活用されています。

論文タイトル:
Cortisol response to stress: The role of expectancy and anticipatory stress regulation
筆頭著者と所属:
Matias M Pulopulos, Chris Baeken, Rudi De Raedt
雑誌名:
Hormones and Behavior
概要:
この研究は、ストレスに対するコルチゾール反応における「期待」と「先行的なストレス調節」の役割を探ることを目的としています。研究者たちは、ストレスに直面する前の期待やその準備がコルチゾールの分泌にどのように影響するかを調べました。実験結果は、ストレス予期がコルチゾール分泌の調整に重要な役割を果たし、ストレス管理の効果を高める可能性があることを示唆しています。特に、ストレス状況に対する先行的な心構えが心理的および生理的反応にどのように影響を与えるかに焦点を当てています。
出典情報:
Pulopulos MM, Baeken C, De Raedt R. Cortisol response to stress: The role of expectancy and anticipatory stress regulation. Horm Behav. 2020 Jan;117:104587. doi: 10.1016/j.yhbeh.2019.104587
PubMed

論文タイトル:
Work e-mail after hours and off-job duration and their association with psychological detachment, actigraphic sleep, and saliva cortisol: A 1-month observational study for information technology employees
筆頭著者と所属:
Tomohide Kubo, Shuhei Izawa, Hiroki Ikeda, Masao Tsuchiya, Keiichi Miki, Masaya Takahashi
雑誌名:
Psychophysiology
概要:
本研究は、IT業界の従業員における勤務時間外の仕事関連の電子メールの確認や仕事から離れている時間(オフ・ジョブ・デュレーション)が、心理的な切り離し、睡眠の質(アクティグラフを用いた測定)、および唾液中のコルチゾールに与える影響を調査しました。1ヶ月間の観察研究において、仕事のメールを勤務時間外に確認することが心理的な切り離しを妨げ、睡眠の質に悪影響を与え、さらにはコルチゾールレベルを高める可能性があることが明らかになりました。この結果は、IT従業員の労働環境と健康に関する新たな知見を提供し、ワークライフバランスの重要性を示唆しています。

出典情報:
Kubo T, Izawa S, Ikeda H, Tsuchiya M, Miki K, Takahashi M. Work e-mail after hours and off-job duration and their association with psychological detachment, actigraphic sleep, and saliva cortisol: A 1-month observational study for information technology employees. Psychophysiology. 2021 Jan;63(1):e12300. doi: 10.1002/1348-9585.12300.
PubMed

CASE STUDY 事例紹介