エクオールと健康についての研究報告

エクオールをつくれる人は、大豆の健康効果を効率よく得られることができると言われていますが、どのような健康効果と関係があるのでしょうか。最近の研究報告をご紹介いたします。

エクオールと骨

女性ホルモンは、骨からカルシウムが溶け出すのを押さえる効果があります。ですので、更年期を過ぎて女性ホルモン分泌量が低下すると、年間約2%ほど骨量が減っていきます。ですので、とくに高齢女性は骨粗しょう症や骨折に気を付ける必要があると言われているのです。

大豆イソフラボンはそのエストロゲン様作用によって、骨からカルシウムが溶け出すことを押さえるはたらきが知られています。

更年期以降の女性に2年間、毎日豆乳500ml(イソフラボン量で約100㎎)を飲んでもらったところ、イソフラボンを摂らないグループは骨密度が約4%低下したのに対し、イソフラボンを摂ったグループは低下しませんでした。

ただしその改善率には個人差があり、エクオールを作れる人の方が、良い成績が得られたことが報告されています。【1】

エクオールと更年期症状

大豆イソフラボンやエクオールは、腸から吸収されて体内で作用した後、1~2日程度で尿から排泄されます(つまり、大豆は毎日食べることが大切です)。 更年期の女性を対象として、尿中のイソフラボン類の排泄量と更年期症状について調べたところ、大豆そのものに含まれているイソフラボン(ダイゼインやゲニステイン)の尿中排泄量と更年期症状の重い・軽いには差が見られませんでした。一方、尿中のエクオール量だけは、更年期症状の重い人の方が少ないという結果となりました。これは、エクオールをつくれる人は、更年期症状が軽い人が多かったということを示しています。【2】
この研究のほかにも、エクオールが更年期のホットフラッシュ(ほてり)や首や肩のこりを和らげるという研究結果が報告されています。【3】

ソイチェックの研究データでも、40~50代の方で「更年期症状がない」方のエクオール産生率は43%でした。一方、何らかの更年期症状があるとお答えいただいた方の産生率は、30~39%でした。特に、頭痛(30%)や腰や手足の冷え(31%)、不眠(31%)、顔のほてり(32%)、のぼせ(32%)などの症状を感じていらっしゃる方は、エクオールが作れない人が多いようです。

エクオールと肌機能

エクオールは、お肌の老化とも関係があるのでしょうか? エクオールをつくれない閉経後5年未満の女性に集まってもらい、大豆を発酵させて作ったエクオールサプリメントを12週間毎日食べてもらったときに肌機能がどう変わったかという研究です。12週間のエクオール摂取によって、目じりのシワ(面積率と一番深いシワの深さ)を測定したところ、目じりのシワの進行を押さえるという結果が報告されています。【4】

生活習慣とエクオール産生能

毎日の食事や生活習慣とエクオール産生能の関係について、いくつかの研究が報告されていますが、まだはっきりしたことはわかっていません。 日本人を対象とした研究では、

  • 緑茶をよく飲む人は、作れる人が多い。【5】
  • タバコを吸う人は、作れない人が多い。【6】

欧米では、

  • ベジタリアンは、作れる人が多い。【7】
  • 魚油(ω-3系脂質)を多く食べている人は、作れる人が多い。【8】

という報告があります。

 

エクオールをつくれる人、つくれない人

エクオールとは?

大豆にはイソフラボンという成分が含まれています。イソフラボンは、その構造が女性ホルモン(エストロゲン)に似ていることから、女性ホルモンに似た作用をもっており、更年期症状の緩和や骨密度の維持に対する効果が知られてきました。また、厚生労働省研究班による大規模コホート研究でも、食品からのイソフラボン摂取量が多いほど、日本人女性の乳がんや脳梗塞、心筋梗塞のリスクが低下し、男性の一部でも前立腺がんのリスクが低下するという研究報告が出されています。【9】

その大豆イソフラボンの健康効果は、個人差があるということが近年の研究で明らかになってきました。食事から摂った大豆イソフラボン(ダイゼイン)は腸から吸収されますが、そのときに、ダイゼインという成分のまま吸収される人と、エクオールという成分として吸収される人がいます。この違いによってイソフラボンの健康効果に差がうまれ、エクオールの方がより高いエストロゲン活性を持つことがわかってきました。

エクオールを作ってくれるのは、腸内細菌です。

では、どうしてエクオールをつくれる人とつくれない人がいるのでしょうか。それは、最近注目されている腸内フローラがカギを握っていました。 ヒトの大腸には様々な腸内細菌が棲んでいますが、その中に、大豆イソフラボン(ダイゼイン)をエクオールに変換してくれる「エクオール産生菌」と呼ばれる腸内細菌が見つかり、このエクオール産生菌がいる(活動している)かどうかが重要だということがわかりました。 エクオール産生菌はこれまで10種類ほど見つかっていますが、まだ未知の産生菌がいる可能性があります。そのため、腸内細菌の遺伝子検査だけでエクオールがつくれるかどうかを調べることは、まだ難しいようです。

エクオールをつくれる人はどれくらいいるの?

エクオールをつくれる人の割合は、多くの研究で報告されており、日本人で50%程度、欧米人では20~30%といわれています。ソイチェックの研究データでは、エクオールをつくれていた人は、全体の43%(1849名中810名)でした。【10】
ソイチェックの検査人数は18万人を超えましたが、現在もこの結果とほぼ変わらない比率となっています。 日本以外で、エクオール産生者が多い国をみますと、中国や韓国、台湾など、いずれも大豆をよく食べている地域であることが知られています。国や地域によるエクオール産生率の差は、大豆の摂取量や食生活による腸内環境の違いが理由ではないかと考えられています。

エクオールをつくれない人が増えている?

2人に1人がエクオールをつくれる日本人ですが、年齢が若くなるにつれてエクオール産生率は低下しています。10代20代の若い世代では欧米人と同じくらいの人しかエクオールをつくれていないという研究が報告されており、ソイチェックを用いた研究でも、大学生や高校生では20%前後しかエクオール産生者がいないことが明らかになってきました。 なぜ若い人でエクオールをつくれない人が増えているのでしょうか。詳しいことはまだわかっていませんが食生活の変化が原因ではないかと考えられています。右のグラフは、年齢別のエクオール産生率と、厚生労働省の国民健康・栄養調査による豆類摂取量のグラフです。日本人の豆類摂取量のうち97%は大豆が占めています。豆類の摂取量は60代が最も多く、若くなるにしたがって食べる量は減っています。政府の目標摂取量は100gですので、エクオール産生菌を維持するためにも、毎日の食事にもっと大豆を取り入れることが必要です。

腸内細菌のエサとなる栄養成分に食物繊維があります。こちらも60代の方が最もたくさん食べています。若い人との差は、1日あたり5g。これはレタスまるごと1個分の食物繊維量に相当します。根菜や海草、キノコなど、食物繊維の豊富な食材を毎日の食卓に取り入れることで、腸内環境を改善していくことが大切です。エクオール産生能だけでなく、腸内フローラを整えることはお通じや免疫能にも効果があるといわれています。 ただし腸内環境は、これまでの食生活の積み重ねで形成されてきたものですので、すぐに変わるものではありません。毎日の食事を少しずつ見直し、バランスのとれた食生活を継続することが大切です。腸内フローラの形成は、離乳期から小児期にかけての食生活の影響を大きく受けるといわれています。将来の健康のためにも、小さいお子様がいるご家庭では、ぜひ毎日の献立に大豆食品を取り入れていただければと願っています。

腸内フローラは、日々のストレスや睡眠、運動量など様々な生活習慣から影響を受けていると言われています。どういう食事や生活習慣でエクオール菌が定着し、増えていくのか、多くの研究が進みつつありますので、今後の研究成果にぜひ期待してください。

大豆を「毎日」食べよう!

毎日食べている人と、普段大豆をあまり食べていない人で、エクオールを作れる人の割合がどれくらい違うでしょうか? ソイチェックを受けた方々に、毎日の食事でどれくらい大豆を食べているかアンケートを取らせていただきました。 その結果、あまり食べない人は24%、ほとんど毎日食べている人は50%。大豆を食べる頻度でエクオールを作れる人の割合は2倍も違っていました。エクオール菌にしっかり活動してもらうためは、豆腐や納豆、豆乳などの大豆食品を毎日食べるが大切であるようです。 また大豆イソフラボンは、食べて1~2日すると尿から排泄されてしまいますので、一度にたくさんの量を食べてもその効果は長続きしません。大豆食品から食べる場合でも、サプリメントから摂る場合でも、適量を毎日食べ続けることが大豆を食べるコツといえそうです。

 

参考:
【1】Setchell et,al.,J, Nutr, 132:3577-3584(2002)より引用
【2】 Aso et.al.,J.Nutr. 140:1386S-13895S(2010)より引用
【3】 Aso T et.al., J Women’s Health21:92-100(2012)
【4】Oyama A et.al., Menopause19:202-210(2012)
【5】 Miyanaga et.al., Asian Pacific Journal of Cancer Prevention4:297-301(2003)
【6】Usui T et.al., Clinical endocrinology 78:365-372(2013)
【7】Setchell K et. Al., The Journal of nutrition136:2188-2193(2006)
【8】Rowlcad L et.al., Nutrition and Cancer36:27-32(2000)
【9】厚生労働省研究班による多目的コホート研究の成果2008年1月
【10】第24回日本疫学会学術大会発表, 2014

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